「性的に興奮しても勃起しない」「勃起した状態を維持できない」「勃起はするけど、硬さが十分ではない」このような悩みを抱える男性も多いのではないでしょうか。男性の6割は50歳になる頃までにEDを経験すると言われており、決して珍しい病気ではありません。
EDにはさまざまな原因があります。心理的な要因であれば、緊張や不安感・ストレスを軽減できれば症状が改善するケースも。
一方で、動脈硬化などの病気が原因のEDは、根本となる病気を治療する必要があります。EDの症状があるのに治療せず放置すると、気づかないうちに病状が進行するリスクがあります。
気になる症状があれば、早めに医療機関を受診して、医師の診察を受けましょう。
ED(勃起不全)とは?原因と治療方法について解説
EDとはErectile Dysfunctionの略で、勃起機能の低下を意味します。
勃起不全または勃起障害とも呼ばれており、十分に勃起できず、勃起しても維持できないため、満足に性行為できない状態を指します。
「勃起しない・勃起した状態を維持できない・硬さが不十分」など、満足に性行為できるだけの勃起が得られない状態は、いずれもEDになります。
もっとも多いのは中等度のEDで、「たまに勃起することができる・性行為の間は勃起が維持できる」ことがほとんどです。「たまに勃起できない・勃起状態に満足できない」場合も中等度と見なされます。
勃起できず性交できない状態は重度と判定されます。
EDの4つの原因
EDは性交時に十分に勃起できない、または十分な勃起を維持できない状態のことです。ただし、ひと言にEDといってもさまざまな症状があります。
性欲があり興奮もするのに勃起しない・勃起しても硬さが足りない・勃起が維持できない・たまに勃起しないことがあるなど、男性なら誰にでも起こり得る症状です。
EDが起こる原因もさまざまで、神経・血管・心理的要因が挙げられます。ここからはEDになる4つの原因について詳しくみていきましょう。
【器質性ED】
勃起を司る血管や神経に原因があるEDを器質性EDといいます。年をとると血管が老化し硬くなり、弾力性がなくなるため器質性EDになる人が増える傾向にあります。
動脈硬化の影響で血管が拡張されず血液の流れが滞ると、陰茎海綿体への血液が届かなくなるためEDになりやすくなります。また、糖尿病や高脂血症など生活習慣病を患う人も血管への負担がかかるため、知らないうちに動脈硬化が進行しているケースもあります。
動脈硬化以外に神経異常によって、性的興奮を受けても脳からの勃起指令が伝わらずEDとなる可能性も。
神経異常には、糖尿病性神経症・パーキンソン病・アルツハイマー病など自律神経そのものに障害が起こる内的要因と、脊髄損傷・前立腺肥大・前立腺がんなどの外的要因があります。
器質性EDは、加齢や生活習慣病による動脈硬化、病気や外傷による神経傷害が原因のEDだと考えられます。
【心因性ED】
ストレスやうつ病などの精神疾患が原因となるのが心因性EDです。
脳からの指令を受けて陰茎に血液が送り込まれることで勃起します。つまり、脳から性的興奮や刺激が陰茎へ伝わらなければ勃起しません。
精神的なストレスを受けると、脳から陰茎に性的刺激を伝達できずEDになります。
原因となるストレスは人それぞれですが、性行為がうまくいかなかったことによるトラウマでEDになることも。
幼少期の体験により、無意識のうちに深層心理に原因がある場合もあり、治療が難しくなることも。子どもができないという焦りや、仕事に多大な責任を負うなど、心理的ストレスが溜まりやすい30代に心因性EDになるケースが多いといえます。
【混合型ED】
器質性と心因性の両方が原因でEDになることも珍しくありません。加齢による動脈硬化や生活習慣病など器質的な要因にプラスして、精神的なストレスなど心因性の原因も重なりEDに拍車をかけることも。
また、一度勃起不全で性行為がうまくいかないと、次も失敗してしまうかもしれないという不安感から、心因性EDが重症化する可能性もあります。
また、薬の副作用で勃起しにくくなり、自身喪失になることで更にEDが進行するケースも。混合型EDは、ひとつずつの原因に対するアプローチが必要です。原因を探るのが難しこともありますが、生活習慣を改善しストレスを溜め込まないように気を付けることが大切です。
【薬剤性ED】
薬剤性EDは、服用している薬の副作用が原因となるEDです。
薬剤性EDの原因になる薬で多いのは抗うつ薬です。うつ症状の場合、脳からの刺激や興奮を抑制する働きがあり、勃起しづらくなります。
その他にも解熱剤や消炎鎮痛剤、睡眠薬、利尿剤、降圧剤なども勃起に影響を及ぼす可能性があります。
以下は、薬剤性EDになる可能性のある医薬品の例です。
- 精神安定剤
- 抗うつ薬
- 睡眠薬
- 向精神薬
- 降圧剤
- 男性ホルモン抑制剤
- ステロイドなどアレルギー用剤 など
実際に服用している薬を変更した途端EDが改善したという事例もあります。EDで悩む人で、何か服用している薬がある場合は医師に相談してみましょう。
【原因別】EDの治療方法
EDを根本的に治療するには、原因となる疾患の治療や生活習慣の改善が必要です。それと併用できる治療法で一般的なのは、ED治療薬の使用です。
ここからはEDの原因別に、最適な対処法や治療法について詳しく解説します。
・器質性EDの治療方法
器質性EDを治療するには、生活習慣の見直しおよび改善と、原因となる疾患の治療が必要です。
ただし、根本的な治療には時間がかかるため、すぐには改善しません。そのためED治療薬を併用します。
ED治療薬を服用することで血流がよくなり、少しずつ血流量が増えて勃起を促します。体質や疾患によってはED治療薬を服用できないこともあります。その場合は血管再生治療など、他の施術にて対応します。
・心因性EDの治療方法
心因性EDを改善するには、不安や緊張を取り除き、ストレスを軽減する必要があります。
ストレスを抱えたままの状態でEDの症状が出ると、それがまたストレスの原因になります。性行為がうまくできないことによる自信喪失から更にストレスを抱え、EDの改善が難しくなります。
不安やストレスを軽減するためにも、EDに対する正しい知識を身につけることが大切です。まずは専門のクリニックを受診し医師に相談するのが一番の近道です。
また、EDの症状をパートナーに伝えるのに抵抗のある男性も多いかもしれません。しかし、悩みを共有することで不安が解消され、症状の改善へと近づけることも。
心因性EDの改善にED治療薬が使用されるのも一般的です。ED治療薬を服用することで性行為がうまくいけば自信につながります。それを繰り返すことで、性行為に対する不安や焦りを軽減できるでしょう。
・薬剤性EDの治療方法
服用中の薬の影響によるEDは、減薬または休薬日を設けるほか、副作用のない薬に変更することで改善される可能性があります。
服用中の薬によってはED治療薬との併用も可能です。持病のための薬と併用する場合、自己判断は禁物です。必ず医師の診察を受け、指示を仰ぎましょう。
参考サイト : ED(勃起不全、勃起障害)
3つのED治療薬の特徴
代表的なED治療薬「バイアグラ・レビトラ・シアリス」には3つの有効成分があり、それぞれ効果が出るまでの時間や持続時間が異なります。
ここからはED治療薬のそれぞれの特徴をみていきましょう。
バイアグラ | レビトラ | シアリス | |
---|---|---|---|
規格 | 25mg・50mg | 5mg・10ng・20mg | 5mg・10mg・20mg |
有効成分 | シルデナフィル | バルデナフィル | タダラフィル |
形状 | 青いひし形 | オレンジの丸形 | 黄色の涙型 |
特徴 | ・世界初のED治療薬 ・効果や持続期間は中間程度 | ・強い効果が期待できる ・即効性がある | ・世界NO.1のシェア率 ・持続時間が長い ・自然に勃起する |
効果の持続時間 | ・25mg 約3時間 ・50mg 約5時間 | ・10mg 4~5時間 ・20mg 7~8時間 | ・10mg 20~24時間 ・20mg 30~36時間 |
効果が出るまでの時間 | 30分~1時間 | 20分~1時間 | 3時間 |
食事の影響 | 受けやすい | ほとんど受けない | 受けにくい |
副作用 | ・ほてり ・目の充血 ・頭痛 ・鼻づまり | ・ほてり ・目の充血 ・頭痛 ・鼻づまり | ・ほてり ・頭痛 ・消化不良 ・疲労感 |
・バイアグラ(シルデナフィル)
バイアグラは世界初のED治療薬で、有効成分「ルデナフィルクエン酸塩」を含有しています。他のED治療薬に比べて高い効果があり、勃起による硬さはレビトラの次です。
ジェネリック医薬品のバイアグラジェネリックなら、他のED治療薬より安く購入できます。
強い効果を得られる反面、持続性が乏しく食事の影響を受けやすいのもバイアグラの特徴です。また、水に溶けやすく吸収されやすい特性から、副作用が生じやすいデメリットも。
薬の効果が切れると副作用の症状が治まることがほとんどで、多くの場合は心配する必要はないでしょう。
EDの症状が重く、高い効果を求める人や、できるだけコストを抑えて治療したい人にはバイアグラがおすすめです。
・レビトラ(バルデナフィル)
レビトラは効果が出るまでの時間が短く、硬さが出やすいのが特徴です。現在、先発医薬品が生産中止となっており、ジェネリック医薬品のバルデナフィルを購入することができます。
レビトラは強い効果が期待できるため、重度のEDの人に適していますが、硬くなりすぎて感度が鈍ることも。また、一時的なほてりや目の充血、頭痛など、バイアグラと同じような副作用が出ることもあります。
とにかく強い効果を期待する人・硬さや即効性を求める人にはレビトラがおすすめです。
・シアリス(タダラフィル)
シアリスは世界NO.1のシェアを誇るED治療薬で、有効成分の「タダラフィル」を含有しています。
バイアグラやレビトラに比べて効果の持続時間が長いのが特徴。最大36時間まで効果を維持できます。また、食事の影響を受けにくいのも特徴のひとつです。
勃起力が自然なので、バイアグラやレビトラでは硬すぎると感じた人にもおすすめ。軽度のEDなら、十分に満足できる効果を得られるでしょう。
シアリスは水に溶けにくく、効果が出るまでに時間がかかります。その分、副作用が起こりにくいメリットも。ED治療薬の服用が初めてで、副作用が心配な人でも安心して使用できるでしょう。
参考サイト : ED治療薬の比較
ED治療薬の処方や服用に関する注意点
日本国内で承認されたED治療薬を使用するには、医師に処方してもらう必要があります。
個人輸入の通販で購入することもできますが、偽造薬である可能性も。効果がないだけではなく、重篤な健康被害を受けることもあります。そのため、ED治療薬は医師の指導のもとで服用しましょう。
ここからはED治療薬の処方や服用に関する注意点を3つ紹介します。
・併用禁忌薬を服用している場合は処方してもらえない
バイアグラ・レビトラ・シアリスには、それぞれ併用禁忌薬や併用注意薬があります。持病で服用している薬があれば、必ず医師に確認しましょう。
併用禁忌薬や併用注意薬を服用しているにも関わらず、ED治療薬を使用した場合には、呼吸不全や過度の血圧低下など、命にかかわるリスクを生じることも。
特に、心臓や血圧、脳血管に持病のある人は注意が必要です。また、不整脈や肺炎、緑内障の持病がある人も副作用を起こすリスクが高いといえます。
ED治療薬の処方を希望する場合は、必ず医師に服用中の薬や既往歴について伝えましょう。
・重篤な副作用が起こることもある
ED治療薬は安全性の高い薬で、副作用が出たとしても薬の効果が切れると症状が治まることがほとんどです。
バイアグラ・レビトラ・シアリスはいずれもPDE5阻害薬に該当するため、似たような副作用が起こります。バイアグラとレビトラは軽い副作用が出やすい傾向に。それに比べてシアリスは副作用が起こりにくいといえます。
軽い副作用には以下のようなものが挙げられます。
- ほてり
- 多汗
- 動悸
- 胸やけ
- 鼻づまりなど
ただし、ごく稀に以下のような重篤な副作用が起こることもあります。
- 長時間の持続性勃起症
- 突発性難聴
- 狭心症
- 低血圧症など
副作用の程度によっては服用を中止し、症状が続く場合は医療機関を受診してください。
国内未承認薬の海外製のED治療薬は、ネット通販でも購入できます。ただし、医療機関を受診するのが面倒だからという理由で安易に購入するのはNGです。
通販で購入できるED治療薬は厚生労働省から承認されていない海外製品です。個人輸入のED治療薬は大半が偽造薬で、効果がないだけではなく健康被害を受けることも。
医療機関で処方された治療薬を正しく使用したにも関わらず、健康被害を受けた場合には、医療費や年金が給付される医薬品副作用被害救済制度が適用されます。一方、ネット通販で購入した治療薬にはこの制度が適用されず、健康被害を受けても救済措置を受けることができません。
参考サイト1 : ED治療薬の適正使用方法
参考サイト2 : 検討項目2ー(1)個人輸入対策の強化
ED改善のために取り組みたい生活習慣
EDを改善するには、ED治療薬の服用以外に生活習慣を見直し、体質そのものを改善する必要があります。
ED治療薬の効果を高めるためにも、改善すべきポイントについて詳しく紹介します。
・食生活の改善
肥満や高脂血症はEDの原因になります。普段の食生活で、高カロリー・高脂肪・糖質や塩分の摂り過ぎには注意してください。これはEDに限らず、生活習慣病の予防のためにも大切なことです。
動脈硬化による血流低下もEDの原因になります。そのため、血液をサラサラにする食材を積極的に摂りましょう。具体的には魚に含まれるEPA・DHAがおすすめです。ただし、これらの食材を摂取すればEDが治るというわけではありません。
EDの改善や予防が期待できる食材として認識し、同じ食材ばかりを摂取するのは避け、バランスのよい食生活を心がけましょう。
・適度な運動を取り入れる
肥満はEDの原因にもなります。日頃から適度な運動を取り入れて、肥満を防止しましょう。
特に有酸素運動は脂肪燃焼が期待でき、ED改善に期待できます。具体的には、ウォーキングやジョギング・水泳・サイクリングがおすすめです。
体力や体調に合わせながら、無理のない範囲で取り組んでみましょう。
・ストレスを緩和する
過度な緊張や不安、ストレスなど心理的な要因でもEDになることがあります。
現代社会において、ストレスをゼロにするのは難しいことです。そのため、できるだけストレスを溜めないように、日常生活の中で趣味や息抜きできる場を見つけて、リラックスできる状態で過ごせるように工夫しましょう。
・禁煙する
タバコには血管を収縮させる作用があります。そのため、喫煙すると血流が悪くなり、せっかくED治療薬を服用しても、効果が出づらくなる可能性も。
喫煙はED以外に生活習慣病など、多くの病気の原因にもなります。健康のためにも禁煙することが望ましいといえます。必要であれば、禁煙外来を受診することも検討してみましょう。
ED(勃起不全)に関するよくある質問
- 1度でもED治療薬を使用したら薬なしで自然勃起しなくなる?
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ED治療薬は1度使ったからといって、飲み続けなければいけない薬ではありません。毎日継続して飲むものではなく、性行為の前に内服する薬です。
ED治療薬には陰茎の血流を促し、勃起をサポートする作用があります。薬の服用で症状が改善し、その後は自信がついて薬が不要になることもあります。
- 20代・30代・40代でEDの治療法は異なる?
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EDの治療法は年代によって異なるものではありません。
ただし、年齢によってEDの原因が異なることは多いです。20代~30代の若い人なら心因性ED、40代以降の中年なら器質性EDや混合性EDが多い傾向にあります。
それぞれの年代で原因に合った治療を行いますが、いずれの場合も共通して内服薬を使用します。
- EDは自然治癒する?
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健康状態に異常のない心因性EDで、症状が軽い場合は、ストレスの緩和や生活習慣の見直しで症状が改善するケースもあります。
ただし、器質性EDの場合は何かしら病気が潜んでいる可能性もあるため、自己判断で放置するのはリスクが高いといえます。
症状がある場合は、その他の病気を見つけるためにも医療機関を受診し医師の診察を受けてください。
- EDとインポテンツの違いは?
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EDとインポテンツはほぼ同じ意味です。
ひと昔前まで、EDは「インポテンツ」「インポ」と言われていました。これらは「能力が低い」「役立たず」という意味合いを含んでいます。
侮辱するような表現にあたり、医療用語としてふさわしくないと判断され、「Erectile Dysfunction(勃起障害・勃起不全)」の頭文字からEDとなりました。
- 朝立ちしない人や中折れの人はED?
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中折れはEDの一種ですが、朝立ちしないことがEDとは限りません。
中折れが一時的な症状であったり、2~3日朝立ちしない日が続く程度なら問題ありませんが、症状が続く場合や頻度が高い場合にはED治療が必要になるケースも。
症状があるのに治療せず放置すると、EDの原因となる病気が進行するリスクもあります。気になる症状があれば、医療機関を受診して医師に相談しましょう。
- お酒を飲むと勃起しにくいにはなぜ?
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アルコールには神経を抑制する作用があります。そのため、お酒を飲むと勃起に必要な神経伝達が抑制され、勃起しなくなることも。
また、習慣的な飲酒は肝機能を低下させるリスクがあります。肝機能の低下は男性ホルモンの減少や性欲減退・EDの原因にもなるため注意が必要です。
- EDの前兆は?
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夜間勃起減少(朝立ち)の減少は、EDの前兆や初期症状となる場合もあります。朝目が覚めたときに勃起しているかチェックしてみましょう。
また、勃起時の陰茎の硬さを測定する目安として「EHS指標」という硬さスケールがあります。
陰茎の勃起時の硬さスケールは以下のとおりです。
グレード1 大きいが硬くない グレード2 挿入できるほどの硬さがない グレード3 挿入できる硬さはあるが、完全に硬くない グレード4 完全に硬く硬直している グレード3・4であれば、性交するうえで十分な硬さがあるといえます。
- 勃起しにくくなる年齢は?何歳から立たなくなる?
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40代前半から徐々に勃起しにくくなります。
40代後半から50歳になる頃には、6割の男性がEDを経験します。また近年、35歳以上の100人に3人がEDになるという報告があり、加齢はEDの大きな要因になることがわかっています。