産後の抜け毛はいつからいつまで続くの? 抜け毛の原因と対策を紹介


産後の抜け毛は、出産から2~3ヶ月経ったころから起こり、4~6ヶ月の頃にピークを迎えます。その後は再び新しい髪が生えてきて、6ヶ月~1年ほどかけて元の状態に戻ります。

 

産後の抜け毛は、出産した女性の多くが経験するもので異常ではありません。時間の経過とともに薄毛は改善されます。

 

ただし、1年以上経っても抜け毛が治まらない場合は、別の原因が考えられるため、女性の薄毛治療を専門とするクリニックを受診しましょう。

 

ここからは、産後抜け毛(分娩後脱毛症)の原因や対策、1年以上経っても抜け毛が減らない場合の対処法について詳しく解説します。

産後抜け毛(分娩後脱毛症)とは?原因と対策・治療法について

出産後2~3ヶ月経った頃から生じる脱毛症を「分娩後脱毛症」または「産後脱毛症」といいます。

 

産後に抜け毛が急増し、ブラシでとかすだけで何本も髪の毛が抜ける・お風呂の排水溝に溜まった大量の抜け毛を見て驚く人も少なくないでしょう。

 

産後にみられる抜け毛は、出産による女性ホルモンの変化が原因で、時間の経過とともに症状は改善されます。

産後の抜け毛の原因

産後の抜け毛には、さまざまな原因が考えられます。まずひとつはホルモンバランスの変化です。

 

妊娠すると体内の女性ホルモン「エストロゲン」の分泌量が増えますが、出産すると急激に減少します。妊娠から出産までに、女性ホルモンの量が急に変化することで髪の毛が抜けやすくなります。

 

ここからは、産後の抜け毛の原因について詳しく解説します。

ホルモンバランスの変化

産後に抜け毛が増える原因のひとつがホルモンバランスの変化です。

 

妊娠から出産までに、体内の女性ホルモンの量は急激に変化します。女性ホルモンには「エストロゲン」と「プロゲステロン」の2種類があり、エストロゲンは髪の成長に関与しています。

 

妊娠中はエストロゲンの分泌量が、妊娠していない時の約100倍までに増えますが、出産すると急激に減ります。エストロゲンの急な変化によって、産後は髪の毛が抜けやすくなるのです。

生活リズムの乱れ

産後は赤ちゃんを中心とした生活が始まります。夜間の授乳やオムツ替えもあるため生活リズムが乱れ、出産前と同じような食事や睡眠を摂るのが難しくなります。

 

産後3ヶ月までは生活リズムが乱れがちです。食べるより睡眠時間を確保したい、栄養バランスの取れた食事を用意することが難しいという女性も少なくありません。

 

栄養不足や睡眠不足は髪の成長にも悪影響を及ぼします。そのため、産後間もないうちは抜け毛が増えやすくなります。

育児ストレス

生まれたばかりの赤ちゃんとの慣れない生活にストレスを感じる女性も多いでしょう。

 

ストレスによって自律神経が乱れると交感神経が優位になり、緊張状態が続いてしまうことで、全身の血管が収縮してしまいます。

 

髪の毛は細い血管を通じてエネルギー補給していることから、ストレスを受けることで髪へのダメージにもつながります。

頭皮環境の悪化

産後は女性ホルモンの変化で肌質が変わることがあります。

 

頭皮に合わないシャンプーを使うことで、肌に必要な皮脂まで洗い流してしまい、頭皮環境が悪化することも。その影響で抜け毛が増えることもあります。

 

また、慣れない育児で髪を洗う頻度が減ったり、丁寧に洗えないことで皮脂が溜まるなど、さまざまな要因が重なり抜け毛につながることも考えられます。

産後ダイエットによる栄養不足

妊娠中に増えた体重を早く元に戻したいという思いから、無理に食事制限してダイエットを試みる女性もいるかもしれません。

 

産後の過度なダイエットは栄養不足に陥り、抜け毛の原因になります。

 

出産後の母体の回復や、母乳育児の場合は母乳を作るための栄養が必要です。無理にダイエットするとカロリー不足になりやすく、髪の毛に必要な栄養が届かなくなります。

 

産後の抜け毛を防ぐためにも、バランスのよい食事を心がけることが大切です。

【産後の抜け毛はいつからいつまで続く?】

通常でも髪は1日50~100本抜け落ちますが、産後には多い人で200本以上抜けてしまうこともあります。

 

髪全体がボリュームダウンし、頭皮が透けて見えたり生え際が後退するなど、びまん性脱毛症のような症状が出るため、戸惑う人も多いでしょう。

 

髪の毛には寿命があり、「成長期・退行期・休止期」のヘアサイクルを繰り返します。産後は多くの髪の毛が一斉に退行期になり抜けてしまいます。

 

一時的に薄毛になるのはヘアサイクルの乱れによるものです。退行期から休止期に入り、そこから2~3ヶ月過ぎる頃には徐々に髪が生え始め、正常なヘアサイクルに戻ると髪の量も元の状態に戻ります。

 

抜け毛のピークは産後4~6ヶ月の頃で、この時期を過ぎると徐々に抜け毛が減り、本来のヘアサイクルを取戻し、新しい髪が成長し始めます。

 

髪は1ヶ月に1cmほど伸びるため、6ヶ月~1年かけて薄毛が改善されます。ただし、ストレスや生活習慣の乱れにより、産後脱毛が1年以上続く場合は治療が必要なケースもあります。

産後の抜け毛の対策方法

産後の抜け毛を完全に防ぐことはできませんが、生活習慣の改善やストレス解消、シャンプーを変えるなど、自身で対策することである程度は予防できます。

 

ここからは、産後の抜け毛対策について詳しくみていきましょう。

バランスのよい食事を心がける

髪に必要な栄養を届けるためにも、バランスのよい食事を心がけることが大切です。

 

産後は母体の回復や母乳の生成のためにも十分な栄養が必要です。髪を作るもとになるたんぱく質や、その働きをスムーズにするビタミンやミネラル・亜鉛を意識して摂取しましょう。

 

慣れない赤ちゃんとの生活で、自分の食事はつい後回しになりがちです。

 

3食しっかり食べられなくても、小分けにして食べたり、食事と併用してサプリメントを利用するのも有効です。

 

【抜け毛対策で取り入れたい食べ物】

たんぱく質

・肉類・卵
・乳製品
・青魚

亜鉛

・牛肉の赤身・牡蠣
・高野豆腐

鉄分

・レバー・ほうれん草
・ひじき

ビタミン

・豚肉・にんにく
・アボカド
・かぼちゃ
・しじみ

 

上質な睡眠を心がける

夜間の授乳などでまとまった睡眠時間を確保することが難しい時期でもありますが、髪の成長には休息が必要不可欠です。疲れが溜まると抜け毛が助長されることも。

 

睡眠は成長ホルモンの分泌を促したり、ストレスを軽減することもできます。

 

一度に多くの睡眠時間を確保できない場合は、昼寝や仮眠の時間を取れるようにし、1回の睡眠の質を高めるようにしましょう。

ヘアケア用品を変える

産後の抜け毛対策として、シャンプーやトリートメントなどヘアケア用品を変えてみるのも有効です。

 

ホルモンバランスの変化で、妊娠中に使っていたシャンプーが合わなくなることも多いです。洗浄力の強いシャンプーは頭皮に負担がかかるため、低刺激のオーガニックシャンプーやアミノ酸系の成分が配合されたシャンプーを選びましょう。

ストレスを溜めない

産後は生活が急変してストレスが溜まりやすく、抜け毛が増えやすい状態になります。産後に女性ホルモンが減少することで、ストレスに耐える力も低下します。そのため、気分の浮き沈みが激しく、産後鬱を招くことも。

 

なかなか難しいかもしれませんが、適度な運動を取り入れるなど、ストレス発散できる時間を作るようにしましょう。

髪型を変える

産後は思い切って髪を短く切るのもおすすめ。髪を短くすることでパサつきがなくなり、薄毛もカモフラージュできます。

 

ショートやボブにして、いつもとは違う分け目を作ったり、オールバックにすることで透けて見える頭皮も目立たなくなります。

 

新たな髪が生えてくる途中の浮き毛(あほ毛)も、スプレーで固めるだけで目立ちにくくなるでしょう。

 

また、出かけるときには帽子を被るのもおすすめ。薄毛をカバーできることや、紫外線から頭皮を守ることにもつながります。

【産後の抜け毛は一時的な症状】

産後の抜け毛は一時的なホルモンバランスの変化によるもので、一生続くわけではありません。出産した女性の多くが経験する生理現象です。
ホルモンの変化は自分でコントロールすることはできませんが、抜け毛予防のために生活習慣の改善やストレス解消、ヘアケアなど、見直しできるところだけでも対策してみましょう。

 

出産から1年以上経っても抜け毛が減らない場合は、別の原因による薄毛の可能性があります。治療が必要なケースもあるため、女性の薄毛を治療できる専門の医療機関を受診しましょう。

産後1年以上経っても抜け毛が治まらない場合の対処法

産後1年以上経っても抜け毛が治まらない場合は、別の原因による薄毛の可能性があります。女性に多いのがFAGA(女性型脱毛症)です。

 

FAGA(女性型脱毛症)の治療法については、以下のようなものが挙げられます。

【FAGA(女性型脱毛症)の治療法】

  • 外用薬による治療
  • 内服薬による治療
  • メソセラピーによる治療
  • 光治療・レーザー治療
  • 植毛治療
【外用薬による治療】

ミノキシジルが配合された外用薬を用いるのも有効です。ミノキシジルには血行促進の作用があり、ヘアサイクルを正常な状態に戻します。

 

外用薬による治療では、抜け毛予防や発毛促進の効果が期待できます。

【内服薬による治療】

女性の薄毛治療に使われる代表的な内服薬は、パントガールやスピロノラクトンです。

 

パントガールは、世界で初めて女性の薄毛改善効果が認められた治療薬で、ドイツの製薬会社で開発されたものです。

 

パントテン酸カルシウム・ケラチン・シスチンなど、頭皮環境を整え、薄毛を改善する効果のある栄養素を主成分とした治療薬です。

 

スピロノラクトンはFAGAの原因となる男性ホルモン「ジヒドロテストステロン」が毛包と結合するのを防ぐ作用があります。女性だけではなく男性も服用できる治療薬で、抜け毛や薄毛の悩みを改善します。

【メソセラピーによる治療】

メソセラピーは、有効成分を含む薬剤を注射器で直接頭皮に注入する治療法です。

 

内服薬や外用薬による投薬治療と併用することも多く、治療開始から3ヶ月ほどで効果を実感できることがほとんどです。ただし、投薬治療に比べて費用が高くなります。

【光治療・レーザー治療】

光治療やレーザー治療は、頭皮の血行を促進し、炎症を抑える効果が期待できます。更に、毛母細胞の分裂が促すことで育毛をサポートします。
2~4週間に1回の施術で、治療開始から6ヶ月ほどで効果を実感できるでしょう。

【植毛治療】

植毛治療は、薄毛の影響を受けにくい後頭部の髪の毛を毛根ごと切り取り、薄毛が気になる箇所へ植え込む外科手術です。
移植した毛根が生着すれば、その後は健康な髪と同じように変え代わりを続けます。
FAGA治療の中でもっとも高額になりますが、一度治療するとメンテナンスの必要がないというメリットがあります。

【サプリメントには治療効果はない?】

FAGAの治療の際にサプリメントを処方しているクリニックもありますが、サプリメントには医学的な治療効果は認められていません。
あくまでも日常の生活で髪の毛に必要な栄養を摂取できない場合の栄養補助食品です。
サプリメントを処方してもらうことで治療費用が高くなる場合がありますので、本当に必要かどうか検討してから購入しましょう。

産後の抜け毛に関するよくあるQ&A

産後の抜け毛をできるだけ早く治すにはどうすればいい?

産後の抜け毛はホルモンバランスの変化によるもので、コントロールできるものではありません。
妊娠中に自然と抜け落ちるはずだった髪が、出産によりホルモンバランスが変化し、大量な抜け毛となります。そのため治療法はなく落ち着くまで待つしかありません。
完全に治すことはできませんが、生活習慣を改善したり、ヘアケア用品を見直すことで抜け毛予防につながります。

産後の抜け毛が薄毛に進展することはある?

産後の抜け毛が薄毛に進展することはありません。ただし、びまん性脱毛症など他の薄毛の症状を併発する可能性はあります。
産後の抜け毛が1年以上長引く場合は、医療機関を受診しましょう。

産後に抜け落ちた髪はもう2度と生えてこない?

産後の抜け毛は退行期の髪の毛が抜け落ちているだけで、6ヶ月ほどで再び新しい髪が生えてきます。
抜け毛が多いと不安になるかもしれませんが、産後脱毛は生理現象で出産した女性の多くが経験するものです。

母乳育児は産後の抜け毛を悪化させる?

母乳育児が産後の抜け毛を悪化させることはありません。
産後の抜け毛はミルク育児の女性にも起こります。また、母乳育児でも抜け毛が気にならない女性もいます。
母乳を生成することで母体が栄養不足になりやすいのは確かですが、母乳育児が抜け毛につながるわけではありません。

生理が再開すると抜け毛は落ち着く?

生理が再開することで抜け毛が治まるケースもあります。
授乳中の母体は、乳汁分泌ホルモンの「プロラクチン」が生成されます。プロラクチンは、髪の成長に欠かせない女性ホルモン「エストロゲン」の生成を抑え、排卵を抑制します。
プロラクチンの分泌量は産後半年から1年ほどで少なくなり、生理が再開します。プロラクチンの分泌量が減り、エストロゲンが増えることで抜け毛も落ち着いていきます。

産後の抜け毛予防で摂取した方がいいビタミンは?

産後の抜け毛予防のために積極的に摂取したいビタミンは、ビタミンC、ビタミンA、ビタミンE、ビタミンB群です。
髪にうるおいと艶を与えるコラーゲンが体内で分解されて再合成する際に、ビタミンCが必要になります。
また、髪に必要な栄養素は血液によって運ばれます。髪の健康を維持するためには、血液をキレイに保つことが大切です。
ビタミンAを豊富に含む緑黄色野菜や、ビタミンEを含む玄米や胚芽米、ごま、ナッツ類がおすすめ。ビタミンB群は頭皮の代謝を促し、抜け毛を防ぐと言われています。

亜鉛は産後の抜け毛に効果的?

亜鉛は産後の抜け毛対策に有効です。
亜鉛には毛髪を構成する「ケラチン」の生成を促す作用があります。また、髪の成長をサポートする働きもあるため、薄毛予防や抜け毛対策のためにも積極的に摂取するようにしましょう。

産後に前髪がツンツンするのはなぜ?

産後に前髪がツンツンはねたような状態になるのは、本来なら妊娠中に抜け落ちるはずの髪が抜けず、産後に一気に抜け落ちて、再び新しく生えてきている過程です。
抜けても大丈夫な髪が、出産をきっかけに一度に抜け落ちた影響なので問題ありません。