治療事例紹介

全人工膝関節全置換術(TKA)のリハビリテーション

全人工膝関節置換術(TKA)とは

変形性膝関節症や関節リウマチ等により変形した膝関節を金属やセラミック等でできた人工関節で入れ替えることです。除痛が目的で歩行など基本動作能力の改善が図れます。

いくつかの手術方法がありますが、当院では主に前方アプローチ(medial parapateral approach)をおこなっており、膝関節のほぼ正面から通常15~20cmの皮膚切開をし、大腿四頭筋や腱に侵襲を加えて膝蓋骨を外側にひっくり返し人工関節を入れる手術です。

TKAリハビリテーションの流れ

概要

全人工膝関節置換術は比較的侵襲が大きい手術であり、個人差はありますが手術の影響として術後は痛み、腫れに伴った関節可動域制限や動作能力の低下が一時的に生じます。
治療の主な目的は、痛みなく日常生活活動をおこなっていただくことです。術後の膝関節の状態(炎症反応や修復期間)に応じて理学療法を進めていきます。

※一般的な例であり、退院やスポーツ復帰の時期などは個人によって異なることがあります。

術前リハビリテーション

  • 担当理学療法士により膝関節の筋力測定や関節可動域測定など膝関節の機能評価をおこないます。

  • TKA筋力測定 combit

術後リハビリテーション

術後1~3日目

術後すぐは急性炎症期で痛みや腫れが著明です。
炎症反応を抑えるためのアイシングを中心におこないながら、血栓予防、起立・歩行動作の練習をおこなって早期離床を促します。
また、膝関節の状態に応じて膝関節周囲の筋リラクセーションをおこないます。

  • アイシングによる炎症の鎮静化

  • 弾力包帯を用いた浮腫除去による皮下内圧軽減

術後4日目~2週間

  • 炎症反応が徐々に弱りながら皮膚など膝関節周囲の軟部組織の修復が進む時期です。
    膝関節の痛みや腫れの状態に合わせながら膝関節周囲筋の緊張を緩めて痛みや突っ張り感を取り除き、スムーズに膝の曲げ伸ばし運動ができるよう無理のない範囲で関節可動域の拡大を目指します。

    個々に応じた自主トレーニング指導をおこない、リハビリ以外の時間でも簡単かつ効果的な運動をおこなっていただきます。
    また、機器(CPM)を使用し約30分間持続的にゆっくりと曲げ伸ばしをする関節可動域訓練をおこないます。

  • CPM

  • 膝関節伸展ストレッチによる後方軟部組織の癒着予防

  • 足関節運動による大腿四頭筋リラクセーション

  • 股関節運動による大腿四頭筋リラクセーション

  • 膝伸展運動による膝前面軟部組織の癒着予防

  • 膝屈曲運動による大腿四頭筋のリラクセーション

  • 膝屈曲・伸展関節可動域練訓練

術後3週目以降~退院

軟部組織の修復が進むと同時に、術侵襲などにおける軟部組織の癒着がはじまって関節拘縮に注意が必要な時期です。
膝関節の痛みや腫れに応じて筋リラクセーション、関節可動域訓練や筋力増強訓練をおこなうとともに退院に向けて段差・階段昇降訓練を開始し、個々に応じて必要な日常生活動作訓練をおこなっていきます。

外来リハビリテーション

退院時の膝関節の状態など、医師が判断しリハビリテーションの回数を決定します。
各個人により多少差はありますが、週1~2回程度のリハビリテーションをおこなっていただきます。

終わりに

退院後は入院時と違い、元の生活に戻ることで活動範囲が広がります。
その為、痛みや腫れの出現などにより膝関節の状態が一時的に悪くなることがあります。また日常生活の中で困難なことが出てくるかもしれません。その時は担当理学療法士に相談してください。個人に合った自主トレーニングや生活動作など再指導します。

外来リハビリテーションを続けることにより個人差はありますが術後3ヶ月目頃より旅行やウォーキングなど色々な趣味を再開している方もおられます。
皆様の声を傾聴し、個人に合ったリハビリテーションを進めていきたいと考えています。

 

部位から探す
高度専門医療
リハビリテーション
キーワードで探す
  • ※半角スペースで区切ることで複数キーワードでの検索が可能です。
    例)鏡視下腱板修復術、鏡視下バンカート修復術等